キジトラの本棚

書店員大学生のおすすめ本紹介

おすすめ小説紹介① 「夜市(恒川光太郎)」

おすすめ本紹介シリーズ、開幕!

 

こんばんは、キジトラです。

皆さん、いかがお過ごしですか?私は後期の授業が終わりつつある中、山積みになったレポートがそろそろ無視できなくなってきました(ブログも二日ほどさぼってしまいました・・・)。同志の皆さんはともに立ち向かいましょうね。

 

さて、いよいよ今回からおすすめ作品紹介を始めていこうかと思います。本に関しては小説、実用書、その他いろいろ紹介していく予定です。久しぶりに本棚をごそごそしていると懐かしい本がたくさん出てきて、私自身も非常に楽しく書けそうです。まだまだ自粛期間続いていきますので、普段本を読まない方も是非手に取っていただけたらと思います!

 

 

「夜市」について

 

記念すべき1冊目は、恒川光太郎さんの「夜市」です。

ジャンルはホラーになるようです。なんと、第12回日本ホラー小説大賞受賞作となっています。私の手元にある文庫版には、「夜市」「風の古道」という2つの短編が収録されています。

 

表題作の「夜市」は、不思議な市場に導かれる兄弟の話です。妖怪たちが様々なものを取引する夜市。偶然迷い込んだ主人公は、なんと「野球の才能」を得ることと引き換えに自らの弟を売ってしまいます。その後兄は野球部で活躍しながらも、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けていました。そして大学生になったある日、再び夜市が開かれることを知った兄は、弟を買い戻すためにまた足を踏み入れる決意をして・・・という感じです。

 

おすすめポイント

 

おすすめポイントは、美しい文章から紡がれる独特の世界観です。いろんな方の本を読んできましたが、恒川さんの文章は簡潔でありながらも心にすっと落ちてくる魅力があります。現実と非現実が交わるような雰囲気が絶妙に演出されていて、読み進めていくたびに表現の美しさに感動してしまうんですよね。どうやったらこんなに滑らかに言葉をつなぐことができるのだろうと思ってしまいます。

とりわけ「夜市」に関しては、世界観がしっかり作りこまれているな印象でした。登場する妖怪や市場のルールが、物語の展開を非常に引き立てています。個人的には妖怪たちとの交渉の場面、妙にリアルですごく好きです。そのうち読んでる側としては、夜市が実はどこかでひっそりと開催されているんじゃないかという気持ちになってきます。ある意味現実との境界が曖昧になって、不思議な体験ができる1冊なのではないかと思います。

 

文量もそこまでなく、非常に読みやすいです。ホラー大賞受賞作ですが、個人的には怖さはそこまで感じませんでした。「夜市」「風の古道」共に魅力あふれるお話なので、いつもと一味違った物語に触れてみたいという方は、ぜひ手に取ってみてください。

 

恒川光太郎さんの作品で「秋の牢獄」というのもあるのですが、こちらもお気に入りなのでまた後日紹介できたらと思います。ではまた。